「商店街の店ったら、“高沢”しかいないだろ?」

「“高沢”ってあの高沢のこと!?高沢のところで働いているのか?」

弥生の反応、今度はマリアが疑問に思った。

「どうして、ボスのこと知ってるの?」

「ボス?」

「ボスは高沢さんのこと。ついいつもの口癖で言った」

弥生の不思議そうな声に、マリアは自分の失態に気づく。

「高沢は俺たちの高校の先輩だよ。高沢が高校の頃は喧嘩が強くて有名だったらしい。だから、俺たちの高校では有名なの」

久志の答えに皆が一様に頷くため真実なのだろう。

「やっぱりボスは昔からボスだったのか」

マリアもなるほど、と納得する。

「そう。だから、黒澤さんが高沢の店で働いているってわかって、俺も最初は驚いたよ」

久志は当初の驚きをこちらにぶつけてくるぐらい、熱く話し出した。

「そんなにすごかったんだ…ボス」

あまりの凄さにマリアは後ろに下がりたくなるほどだ。

「なんてったって、俺らの高校では伝説だからな」

弥生が自慢気に高沢の武勇伝を話し出す。

この話がまだ続くとわかり、マリアはバレないように小さなため息を吐いた。