黒猫前奏曲

放課後、生物の授業も終わり、実験室から引き上げると、担任は既に教室に居り、壇上で待ちわびていた。
担任が私たちを待っているのは珍しい。すぐにホームルームが始まり、瞬時に終わった。
帰るために席を立ち始め、廊下に向かう生徒を無視して、マリアは担任に近寄った。

「唐沢先生?」

「おう、どうした黒澤?」

唐沢のウキウキ感が伝わってきた私は、唐沢がなぜこんなに浮かれているのか確信した。

「吉野先生と良いことあったの?」

マリアは唐沢の耳元で妖艶に微笑みながら囁いた。
刹那、唐沢の顔が青白く変色していくのがわかった。

「おまっ…どうしてそれを!?」

唐沢が叫んだため、周りも手を止めて私たちの様子を伺う。

「あ~ぁ、先生が叫んだから注目の的になったじゃないの」

私はヤレヤレといった感じで肩を竦ませながら、溜め息を吐く。退散することに限ると思った注目の的となった1人を残して立ち去ることに決めた。

「先生、早く結婚してください。それでは、ごきげんよう」

私は荷物片手に優雅な物腰と口調でヒラヒラと手を振り、教室を出る。

“結婚”という言葉に過剰反応した教室にいた噂好きの生徒たちは、一斉に先生に詰め寄り質問攻めにしている。

「悪魔!!」

そう聞こえたが、空耳だと思い、私は下駄箱で靴を履き替え土を踏む。