黒猫前奏曲

連れてこられた場所は一件のプレハブ小屋。

白い壁が一般的なプレハブ小屋なはずなのに、なぜかこの壁は黒く、夜の闇に隠れてしまえば全く目立つことはなかった。

「ここが“溜まり場”ってやつ?」

「うん。といっても、道成が親父から借りた土地に勝手にプレハブ建てただけだけどね」

空き地に勝手に建てたのだと思っていたが、土地はちゃんと道成という人のらしい。

「そういえば、道成って誰?さっきからちょいちょい名前が出てる気がするけど」

「あぁ、道成は…」

そう笑いを含みながら答えようとしてくれる久志を押さえ、目の前の男が口を出す。

「道成は俺のことだ」

「え?ミッチーの正式名称だったの?」

私は驚きを隠せず道成に言うと怒りのこもった口調で弥生を睨みつけながら言う。

「俺は最初から道成だよ。弥生人が変なこと言うからこいつが変なこと覚えちまったじゃねぇか」

「あぁ!!また俺のこと“弥生人”とかバカにしやがって!!俺は米なんて作ってねぇ!」

面倒くさそうにそねやりとりを見ながら、私は久志に同情の瞳を向ける。

「いつものことだよ」

久志は乾いた笑いを吐き、先にプレハブへと入っていった。