玄関の鍵を閉め、階段を降りながら、今日の散歩コースを決める。

ふと、この前の男のことを思い出した。

あの公園に行こうと思ったのは気まぐれからだったと思う。

決して、運命とか必然とかではない。

私は今日の散歩コースが決定し、闇の中をゆっくりっ歩き出す。この住宅街が閑散とし、世界に自分しかいないような錯覚に捕らわれるような時間が私は好きだった。

道路からはみ出るように公園にある木の葉が見えてきた。
住宅地に申し訳なさそうに、また、遠慮がちに寄せ合っている木の姿を滑稽だと思ってしまうのは私だけだろうか。

公園に入り、この前男が倒れていたベンチに向かう。

もちろんそこには誰もいない。