「行くぞ」

私の頭をポンッと軽く叩くと先に家を出た。
私は自分の飲んだマグカップを流し台まで行きスポンジで洗う。流さずにそのままにして私も外に出る。

「遅い。早く乗れ」

「鞄取りに行ったら遅くなった」

そう嘘を付き助手席に乗る。乗るとすぐにボスはアクセルを全開にし、道路を徘徊し始める。
今ではこんな荒い運転になれたものだが、最初は慣れずによく気持ち悪くなった覚えがある。

アパートの近くで車を降ろしてもらい、軽く手を振る。

「明日も来い」

「明日はバイトないけど…」

「そんなのしるか」

一発殴ってやりたい衝動を抑え、私はヒラヒラと手を振り、肯定も否定もしないままアパートに向かう。

「おい、マリア。返事ぐらいしろ」

そう後ろから突っ込まれたので、くるりと振り向きボスに言ってやった。

「気が向いたらね」