黒猫前奏曲

「今日はありがとうございました。また、来週お願いいたします。そして、できればここでやりたいです」

「おやおや、佐藤くんもここが気に入りましたか?」

「はい。珈琲は美味しいですし、内装も素敵ですし、何よりマリアちゃんが可愛いですしね」

最後のフレーズを佐藤はマリアを見ながら言う。

「おやおや、佐藤くんがこんなに必死になるなんて。講義もこれくらい真剣ですとありがたいのですがねぇ」

まるで普段の佐藤が不真面目であるような言い方である。

「中山教授、ひどいですよ。いつも俺は必死ですよ」

必死に弁解する佐藤に、マリアはなんだかひょうしぬけしてしまった。
大人っぽいけど大人じゃない。中卒で社会に出ている友人の方が未成年だがより大人に見えてしまうのは世間に早く出ているからなのかもしれないとマリアは妙に納得してしまった。

「違うからね、マリアちゃん。俺はいつも真面目だからね」

鋭い眼差しでマリアに弁解する佐藤を高沢は「若いな」といい、ニヤリと笑っていたのに気づいたのはマリアと中山だけだろう。

会計を済ませ、中山と共に佐藤が出ていくと高沢がマリアに話し掛けてきた。

「佐藤はどうだった?なかなか面白そうなやつだと思うが…」

高沢がマリアに対し言葉を選びながら話しかけてくる。

「う〜ん…やっぱりまだ男はいいや」

マリアは苦笑いしながら、高沢の申し出を断った。

まだ、いい…