ふとそう思った瞬間、なぜだか黒猫に巻かれたリボンが妙に気になってしまった。

誤解でなければいい、と思い久志は自分の考えを口に出す。

「なぁ、道成。お前が黒澤となにかあったことぐらい俺も弥生もわかっているつもりだ。それをいつまで俺たちに黙っているつもりだ?」

真剣な口調と眼差しに道成は久志と弥生を交互に見つめる。
そして、道成はあの日の出来事をポツリポツリと話し始めた。

雷雨だったこと、マリアを見つけたこと、様子がおかしかったこと、目の前の自分よりも高沢を頼ること。

悔しい…と道成は最後に呟き、黒猫を握りしめた。

弥生は苦しそうな道成の表情を見つめ、心配そうな表情で道成と久志を交互に見つめオドオドする。
一方、久志は道成の話を聞き、一つの確信を得た。

「道成、話はわかった。ただお前と高沢さんでは、黒澤との歴史が違う。おそらく黒澤の奇怪な行動に、高沢さんが過去に絡んでいたのは間違いないだろう。だから、慌てる必要はないはずだ。お前にはこれからがある。いつだってチャンスはあるじゃないか。それにな…」

道成が先程から握りしめていた黒猫の青いリボンを引っ張るとシュルッと軽快な音と共に地面に垂直に伸びた。

「おい。何するんだ」

道成の久志の突発的な行動に一足遅れを取ってしまい、言葉のみの反抗となる。

「まぁ、怒らず見てみろ」

重力によって下に下がっていたリボンのヒモは、久志が端と端を持つことによってピーンと横に広がった。

「“ごめんなさい。後、ありがとう。”」

道成は久志からリボンを取り替えすのを止め、そこに書かれていた言葉をそのまま読んだ。
そのリボンの裏地にはネームペンなのか、黒い字で謝罪と感謝が書かれている。

「これを見る限りお前は黒澤から嫌われてないと思うが…そう思うのは俺だけか?」

リボンを道成の手に乗せ、勝手にとって悪かったな、と道成に謝罪した。