「いってぇ…」

アイツのメガネが床に転がった。

けれどわたしは肩で息をしながら、アイツを睨み付ける。

「いきなり何すんのよ!」

「何って…キスだけど?」

「だあああっ! 何でそんなに冷静なのよっ!」

「騒ぐと誰か来るよ」

ぴたっ、と動きを止めた。

今は放課後の教室。

わたしとアイツしかいない空間。

…フツーの女子生徒と男子生徒であれば、夕日の満ちる誰もいない教室というシチュエーションは、心ときめくかもしれない。