千日紅が咲いている

 ヤスの車に乗り込むと、少しドライブしようかと言って走り出した。

 しばらくしてもヤスは口を開かなかった。

 あの話の続きをするつもりはないようだった。

 きっと、私が何か言わない限り、これ以上自分からは聞かないんだろう。

 本当、優しい奴。


 ラジオから流れてくるDJの軽快なトークが、車内を満たす。

 車の窓から見える夜景は、いつも幻想的に見える。

 何度見ても綺麗だなと思う。

 夜の冷えた空気が好きだ。

 もう寝る時間だというのに、逆に目がさえちゃう感じ。

 今からだ!って思わされる夜風。

 少し鳥肌が立ちそうになるそれに肩をすくめるけれど、それが良くて、足が軽くなる。

 窓を開けたら、その風が流れ込んできて、


「涼しいな」


とヤスが言うから、「うん」と返した。

 のばしていた髪が揺れた。

 ヤス、頑張ってるんだよって言いたかった。