だから、帰ってきたくなくなかったってのに。
去年まではアリスさんが(今更だと思うが、リタの姉)
迷い道の術をかけて、なるべく人間を近付けないようにしていたんだ。
さすがに、毎年は嫌になったんだろう。で、その代わりを俺がするんだと。
無茶苦茶だよな?
爺さんの肖像画の飾られている書斎へと向かう。
何かヒントが得られるかもしれないしな。
そこには、驚くものが用意してあった。
何百年も前に書かれのであろう、黄ばんだ封筒が一つ。
それは、紛れもなく俺への手紙だった。
「嘘だろ!?」
どうして俺の存在知っているんだよ!?
第一、1519年っていったら母であるシンディも生まれてもいないのに。
恐る恐る封を切る。中にはこう記されてあった。
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Dear 未だ見ぬエマーソン家の末裔、人間の男との間に生まれたウィルズリ
(見出し長いよ)
よく来たな。
お前さんは心優しいから迷っているのであろう。
ウィルズリ、ソナタは紛れもなく俺の子孫だ。
(アンタは超能力者か)
つまり、ヴァンパイアということだ。だが、無駄に生き血を吸い出せと言うのではない。
(当たり前だ)
必ず、お前を求める女性が現れる。それまで静かに暮らすのも良かろう。
しかしな、そろそろ力を蓄えておかなければならない。
今回のミッションは乗り気ではないだろうが、試練だと思ってくれ。
(ミッション? 子供たちを驚かす事が?)
次の中秋の名月の晩、お前は生まれ変わる。聖なるヴァンパイアとしてな。楽しみにしているぞ。
From ミッシェル-エマーソン
(誰かが爺さんの振りをしているのだろう)
P・S
俺は、正真正銘ミッシェル-エマーソンだ。代筆でもなんでもない。
(絶対代筆だな)
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こんな小細工寄越さなくたって、俺はヴァンパイアの末裔である事は解っているさ。(多分)



