月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情

その通りだった。

達郎のお母さんはもともと体が弱く、達郎を生んでからはずっと入退院を繰り返していた。

そして達郎が9歳の時に病気で亡くなった。

お葬式のことはよく覚えている。

達郎はまったく泣かなかった。

唇をかみしめて、泣くのを必死にこらえていた。

『達郎、お母さんが死んでも泣かないでね』

生前、お母さんとそう約束していたからだった。

健気にその約束を守る達郎の姿に、葬儀の参列者はみな涙した。
(あたしもその1人)

あれなら大泣きしてくれた方がマシだと、達郎のお兄さんがつぶやいたのは今でも覚えている。

達郎の瞳に憂いが浮かぶようになったのはそれからだった。

あたしにはそれが、涙の代償に思えた。

あたしはソファに座ったまま達郎を見上げた。

しかし達郎の表情は、涙でにじんでよく見えなかった。

自分の想いが母親に伝わらないだなんて、そんなの悲しすぎる。