月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情

「犯人って、あの火事は放火だったの?」

淑恵の代わりにあたしが疑問を口にした。

「放火じゃない。でも、犯人はいる」

達郎の答えに頭の中に?マークが浮かぶ。

「あれは収れん火災だ」

収れん火災?

聞き慣れない言葉に頭の中の?マークがどんどん増えてゆく。

「収れん火災とは太陽光が凸レンズや凹面鏡などで反射、屈折して1点に集まることで発火する火災だ」

あたしは小学生の時の理科の実験を思い出した。

虫眼鏡で太陽光を集め、黒い紙を燃やすというアレだ。

「主にステンレス製のボウル、老眼鏡、そしてペットボトルが凹面鏡と同じような働きをして火災が発生する」

ペットボトルという単語にあたしの記憶が反応した。

「あのお婆ちゃんの家の…!」

「猫よけのペットボトルだろうな」

あたしは達郎が塀の上で太陽を眺めた理由を理解した。

犯人は太陽だったのだ。

「でも2度目の火事は…?」

隣の淑恵が、か細い声を出した。