最初のボヤ騒ぎがあった庭に入った。

庭といっても本当にせまくて荒れ放題。

灌木は手入れされておらず、地面はひび割れ、落ち葉と雑草が表面を埋め尽くしていた。

「こんなせまい庭じゃ人が入ってきたらわかるわよね」

そう言いながらあたしはアパートを見た。

庭には1階の3部屋が面している。

1階の部屋は3つとも留守だった。

淑恵とリカちゃんが住む部屋は真ん中。

淑恵はパート事務として働いており、リカちゃんは学校に行っているはずだった。

「ほんと、人気も火の気もなさそうね」

達郎を見ると、しきりにあたりを眺めていた。

「どしたの?」

「どっかに鏡がないかなと思って」

「鏡?」

「レーザーを使って火を点けたかもしれない」

「…『ガリレオ』ネタはもう古いわよ?」

返事の代わりに達郎は黒い絹の手袋をはめた。

そしてガサガサと地面をあさり出した。

怪しい足跡や火の気がないか探っているようだ。

…ごまかしたな。