「火事といってもボヤだったんだろ?」

「たとえボヤでも火事は火事よ」

達郎の言葉にあたしは反論した。

「しかも火の気がまったくないところでの火事よ?」

あたしたちは淑恵とリカちゃんが暮らすアパートに来ていた。

時刻は午後1時すぎ。

最初の火事が起きた時刻だ。

「火事の謎を解いたところで、なにがどうなるもんでもあるまいに」

あくびをかみ殺すような声で言う達郎。

「だいたいが火事と児童虐待がどうつながるんだよ」

「リカちゃんは火事をオバケの仕業だと思ってるの」

そして淑恵はそんなリカちゃんにいらだちを覚えている。

だったら火事の原因を突き止めれば、淑恵とリカちゃんの間でオバケ騒ぎは終わるのではないかとあたしは考えたのだ。

「ポルターガイストの方は?」

ぐっ。

「オバケ騒ぎのおおもとはそっちだろ」

「それはたぶんリカちゃんのイタズラだと…」

「そのイタズラの理由がわからないと淑恵さんは言ってるんだろ」