「ヴェルヌ様?」
「こいつに湯浴みを頼む」
ずぶ濡れのミュリエルの姿を見てエルトは初め驚いたが、何も聞かず「わかりました」と頷いた。
「そのまま俺の部屋へ連れてこい」
そう言うとヴェルヌは部屋を出て行った。
「さ…行きましょう」
呆然と立ち尽くすミュリエルに優しく声をかけると、エルトは浴槽へとミュリエルを連れて行く。
湯浴みの間もエルトは何も聞かなかった。
ただ黙って、その冷たい身体を温めた。
そしてミュリエルに優しく服を着せると、そのままヴェルヌの部屋へと案内した。
「国王様がお待ちです。早くお行きなさい」
「ありがとうございます」
ミュリエルがお礼を言うとエルトは優しく微笑んだ。
そして、ヴェルヌの部屋へと向かうミュリエルの背中に、小さく呟いた。
「お礼を言うのは、私の方です」


