「国王…様…」
初め口を開いたのはエミリアだった。
そんなエミリアには目もくれず、ヴェルヌはスタスタとミュリエルに近づくとそのずぶ濡れの体をそっと抱き上げた。
「国王様…?」
「黙ってろ」
そのままヴェルヌはミュリエルを連れて城の方へ歩き出した。
そんなふたりの姿に、その場に駆けつけたスティークとラナはホッと胸をなで下ろした。
(あいつ…)
スティークもヴェルヌの姿を見て口元に笑みを浮かべた。
「さて…。俺は残された美女たちのお相手でもしますか」
そう言うと、スティークはゆっくりとエミリア達に近づいていった…
―――――
「国王様ッ。あの…離してください…」
「うるさい」
「でも…」
「黙れ」
ヴェルヌに抱き抱えられたまま、ミュリエルはバタバタと暴れたがヴェルヌは離そうとはしなかった。
「もう…離すかよ…」
「え?」
ミュリエルにも聞こえない声でそう言うとヴェルヌはそのままエルトの部屋へと向かった。


