そう言いながらヴェルヌの胸ぐらをぐいと掴み上げ、スティークは更に言葉を続けた。
「お前がそんなんだったら……俺がもらう」
そんなスティークの言葉に、一瞬大きく瞳を見開いたヴェルヌ。
しかし、すぐに口元に笑みを浮かべた。
「どうぞご自由に…」
――バキッ…!!
ヴェルヌの身体が、大きく揺れる。
「何すんだッ!」
何とか踏みとどまったヴェルヌは、そのままの勢いでスティークを睨み返す。
しかし、スティークはそのまま無言でドアへと向かった。
そしてドアの前で静かに振り返ると、ヴェルヌの瞳をじっと見つめ、静かに言った。
「後悔するぞ…」
それだけ言うとスティークは部屋を後にした。
残されたヴェルヌはフラフラと立ち上がり椅子に腰掛けた。
「あいつ…本気で殴りやがって」
じんわりと痛む頬をさすりながら、頭に木霊するスティークの言葉。
『ミュリエルを助けに行け』
『後悔するぞ…』
スティークが伝えようとしたことはわかっている。
そして。
――今自分がすべきことも。
「ミュリエル…」
美しい瞳が――さらに強く輝いた。


