「入るぞッ」
勢いよく、スティークがヴェルヌのいる公務室のドアを開ける。
部屋の中ではヴェルヌがいつも通り机に座りサインを書いていた。
「よお。いったいどうした?そんな顔して…あ、例の女に振られたか…」
いつものように、ヴェルヌがスティークに話しかけたとき。
――ダンッ!!
ヴェルヌの言葉を遮るように、スティークは思い切り机を両手で叩いた。
目の前でそのようなことをされたヴェルヌは、少し驚いたように、しかし睨むようにスティークを見上げる。
「ミュリエルを助けに行け…」
低い声で、スティークはそう呟いた。
真っ直ぐにヴェルヌの目を見て話すスティーク…
そんなスティークに、ヴェルヌは表情を変えずに答えた。
「なぜ俺が?」
そのままの状態でふたりはしばらく睨み合った。
――そして。
先に動いたのはヴェルヌだった。
「何かと思えばそんな事か…だったら早くでてってくれ。仕事の邪魔だ」
立ち上がり、窓辺に移動し外を見ながらそう言うヴェルヌに、スティークは怒りをあらわにした声で言った。
「そんな事だと…お前にとって彼女は特別だったんじゃないのかッ?」


