「真月、おいで。」

アンプからか、
彼の生声からか
どっちから聞こえたか
中央に誘う声がした。


結局、先日と同じ格好で
私は彼の隣に立つ。

ちょっと不服そうな彼に
理由を問い質せば、
生足は特定の男の前でしか
見せないもんだとか、
持論を吐いていた。

あまりに説得力がないから
却下した。


こんな色気だしてる
プレーヤーの横で、
普通になんて、
出れないでしょ。

一応、オンナですから。


多分、鷹尾君の生徒が
何人かいるんだろう。
私を見知るような雰囲気が
反応から伝わってくきた。


会釈だけして、
スタンドからマイクを抜き取り
スタンバイの合図を送る。


視線が絡んだ。


その眼差しは
いつも繊細だ。


カウントの後
音が零れて

ライトの色が変わった。


スーッと息を吸って

私は

最初の音を吐き出した。