まさか・・・

こんな、家の目と鼻のさきに
勤めてるなんて、
思わなかった。


俺ん家は、
結構オフィス街の
ど真ん中にある。

景気が悪くて、貸しビルじゃ、
なりたたないような物件だ。

自宅で教室開業も
見込んで借りたから、
その辺のマンションよりは、
空間も広い。


しかし・・・ここらって
こんなに、人が多いのか?


いつもなら、寝てる時間。

さすがに、こんな赤毛に
髪を染めてるリーマンなんて
いなくて、外で待つような
勇気はない。

・・・な、もんで

こんな距離なのに
車中で、アイツを待ってる。


『9時半には着くと思う』

彼女の言葉を思い出す。

指定の時間は、もうすぐ、だ。


しっかし、どこから
くるんだよ?

言ってたビルは、角地にあって
四方のどちらからくるかも
わからない。



・・・何十人歩いてる?

ラッシュ時ではないらしいが
それでも、何人いる?!


なのに、わかるんだ。


前方から、OLにしちゃ
派手な髪を、フワフワと
リズムカルに風に踊らせ、
パンツスーツをビシッと
着こなす彼女が。


いかほど目立つんだ・・・