それを、まくしたてて
出て来た名前が

『渡辺さん』
だった。


が・・・


なんか、雰囲気が違う。


ヤベッ・・・
違う奴かな・・・?


『鷹尾センセ?』


電話の向こうで、
彼女が訝しんでいた。


「あ。ああ、あのさ
譜面と音源、
渡したいんだけど。」 

『ああ、仕事の後で
取りにいきますから、
受付に預けてもらえますか?』

・・・いや、
そんなに待てない。

何なら、今すぐ
俺の思ってる人物か、
確認したいくらいだ。

「渡辺さんて、会社どこ?
早い方がいいだろ?
持ってくよ。」


明日、見に行ってやる!


親切心を装って
凄いこと言ってる自分に驚く。

電話の向こうでは
彼女が驚き、遠慮する声が
聞こえてるけど

日頃じゃ有り得ない
オシの強い自分に
自分が驚いてしまって

彼女のいいたい事なんて
全く頭に入ってこなかった。