「歌だよ。歌。」


彼女は不思議そうに言う。


あ・・・歌ね。

なんだ、一人相撲かよ。


ずっと、
はっきりしなかったから
言わなかったけど・・・

自分の中で、
確信を持てた気持ちがある。


今は、言わないけど。


目の前のライブで
それどころじゃないから。


でも、落ち着いたら
ハッキリさせっかな。


「真月。いいよ。
鍵、渡しておく。

・・・でさ、ライブ、
一通り終わったら、
ちょっと話あるんだ。
聞いてくんない?」

「何?改まって。
今じゃダメなの?」

「うん。後がいい。
当分、時間ねぇし。」



ってか・・・


気まずくなんの
嫌なんだ。


「ふーん?わかったよ。
じゃあ、当日まで貸してね。」

掌に置いた鍵を
キュッと握って
彼女は、満面の笑みを
浮かべた。


この表情が可愛くて
ドキドキするんだ。

思わず、目を逸らす。


「レンタル代、晩飯のおかず
三品でいいから。」 

「そのほうが時間かかるっつの
缶ビールにしてくんない?」

せっかくのムードは
消え去っていた。