「樹里!ただいまっ♪」


ライブを終えてから数日、
樹里の部屋に
転がりこんでいる。


「おかえり。」


照れながら、
返してくれる言葉が、
何とも言えず可愛くて
笑顔が零れる。


「どーだった?
うまくいった?」


玄関に迎えにきてくれた
樹里が聞きたいのは
転籍の件だ。


「うん。引継終えたら
退職って方向で決着したよ。

その後の事は、また考えるよ。」


「そっか。了解。
んじゃ、ちょっと出掛けるか。」

時計をチラッと見て
彼は言った。

「どこいくの?」

「ん?届け物」

聞いた私に、
赤い顔をして
コートのポケットから
今朝、手渡した紙切れを
ちょっとだけ見せた。


「うん♪いく。」


冷たい風も、
今日は気持ち良く感じる。
繋がれた掌は温かくて
これから始まる事に
ドキドキした。