フロントガラスが
ほのかに曇るなか
障りのない話をしていたけど
不意に、沈黙が訪れる。


「真月?」

「ん?」


「理由・・・きかないの?」


「・・・え?」

理由って・・・

何の?・・・


もしかして

いつかの、
キスの・・・理由?



「言い訳・・・するつもりは
ないけど・・・

今回に限っては・・・
言い訳したい。」


改まっていわれると
あのシーンが浮かんで
胃が痛くなる。


「思い出したくないから
聞きたくないよ。」

「でも、このまま、
気まずいのって、嫌なんだ。
真月だって、中途半端じゃ
決められないだろ?」


決めるって、何を? 

不思議そうな表情を
したのだろうか?


「これから先の事
返事しなきゃダメなんだろ?
会社に。」

ああ・・・転籍の事、
気にしてくれてんだね。


確かに『保険』じゃないけど
樹里との未来は
選択を左右する
最後の砦のような
位置づけにはある。


「アレ・・・
見たから、鍵返しに
来たんだろ?」


うーん・・・微妙だな。