樹里に、
天然と言われたショックで、
張り詰めてた何かや、
気まずさが、
音を立てて崩れていった。

・・・と、いうか、
完全に脱力した。


「ついたよ。」


彼に促され降り立てば、
目の前には、夕焼けに
そまりゆく町並みと、
海が見渡せた。

「わーっ。綺麗だねぇ。」

きっと、夜景なんかだと
もっとキラキラして
見えるんだろうけど

赤とオレンジの
グラデーションが、
何とも言えず、きれいで。

「いいところ知ってるんだね。
よく来るの?」

デートコース?
探りをいれてみた。

「んー。若い頃、
この辺走ってたんだ。」

「暴ヤンかよ・・・。
いまの車って、
触ってないんでしょ?」

下衆な言い方するなぁ・・・と
彼は、苦笑する。

いたって普通のセダンからは
意外な過去に見える。


「車は興味ねぇし。
普通に、走ってくれれば
それでいい。
って、寒くねぇ?」

「寒い。ギブアップ。」

「ホント、寒がりだな。
あっち、寒いだろ?
どうしてんだよ?」

樹里が笑いながら
ドアをあけてくれた。