「次、待たせてっから、
ワンコーラスでいい?」
「十分です。」
どこか余裕のある彼女と
対象的に、何か、微妙に
格好つけてる自分が
こそばゆい。
ワンコーラス・・の
つもりが・・・フルコーラス
弾いてしまったのは
緊張して
トチリまくったせいだ。
お抱えギタリストを持つ彼女
里奈に聞くところ
彼女達は、今や
セミプロだという。
一応・・・も、何も、
ギターで食ってる手前
あいつらに負ける訳に
いかなかった。
小さな失敗を取り戻して
いいところを見せようと
していたら、必然的に
最後まで弾く事と
なってしまった。
彼女は、俺の右側の壁に
もたれ立ち、ホール辺りを
つまびく指に見入ってる。
・・・なんか、わかんのかよ?
見たところでさ。
弾き終わって直ぐ、
トチリまくって気後れする
自分をごまかすように
食ってかかった。
「なんか、わかった?」
適当に、わかったような事を
いいやがったら、
鼻っ柱おってやろうと
思ってた。
そうしたら・・・