東京に出向して二ヶ月近く。

帰省と歳末の休みを兼ねて
地元に帰って来た。


社長が、出向先の役員直々に、
音楽をやっていること、
素人ながら、ソコソコの
位置付けにいる事を
話してくれて、
融通を考慮いただいたと
いったところだ。


一週間ほどの帰省のうち
三日間は、
ライブの調整に当てる予定で、
透がホテルを
押さえてくれている。


「真月、声でんのか?」

荷物を搬入してくれながら、
ここ暫く、まともに
楽器と音合わせしてない私を
心配して彼は言う。


「うん、多分ね。」


練習はしているけど
私達は、普通のバンドより
練習量をこなすため
ちょっと、不安ではある。


「そんな真月のために、
特別レッスンを用意してるので
いってきなさい。

断るとか許さないからな。」

透は言って、
見覚えのある鍵を
掌にのせた。


この鍵・・・


まさか


「透が弾いてくれたら
いいじゃないっ?!?!」

「愚かモノ。
世間は、クリスマスなのだよ。

俺はデート、後の二人は仕事と
終業式後に忘年会

暇な奴、コイツしか
いねーじゃん。」