【短編】鐘の音が聞こえる

私がそんなことを考えていると、バスは突然停まった。



窓の外を見る。



しかし、暗くてよくわからない。



私はケンの方へ視線を走らせる。



その時、私は目を疑った。



ケンじゃない…



目の前の人は、誰…?



「ここ、覚えてない?」



その男はそう言ったが、私には理解ができなかった。



「…奈緒。俺だよ。顔、覚えてないの?」



私は頷いた。



誰…?



思い出そうとすると、頭痛が私を襲い、記憶を塞がれる。



「君の記憶には、もう俺はいないんだね…?」



悲しい目を向けられた瞬間



私の身体に、稲妻のごとく衝撃が走る。



「なぜ、君は『健』の帰りを待ち続けるんだい?」



男は続ける。



たける…?



私の限りある記憶の奥で、微かな光りが射した気がして、私はバスを飛び降りた。








ここは…!



ここは…!?