先程から、板張りの床を拭き掃除しているのだが、ぞうきんはいっこうに動かない。




 巫女の手より、口のほうが、よく動いているような有様だった。




 しかし、不意に、巫女のぼやきが止まった。




 そして、慌てたように拭き掃除を再開する。




 誰かに、名前を呼ばれたような気がしたのだ。




 もしかしたら、宮司がやって来るところなのかも知れない。




 手を、一応、動かしてはいるが、意識は耳に集中させていた。