「“神宿しの勾玉”・・・・・・」




 秀郷の表情は、相変わらず、変わらないが、その声には僅かに熱が感じられた。




「“九曜の勾玉”には“九曜の勾玉”・・・・・・。

それを殿に差し上げましょう。

その勾玉があれば、きっと、殿の大願も成就されるに違いありますまい!」




 玄讖坊が、妙な抑揚を付け、熱っぽく言った。




 それはまるで、毒気を吹き込んでいるかのようにも見えた。




 秀郷が、唇の端を吊り上げる。




「和尚、すまんな。

これは、有り難くちょうだいいたそう」




 そう言って、秀郷は、魔界の如き荒れ寺をあとにした。