「いったいどこに?」




「花鵠國じゃ・・・・・・」




 そう言う秀郷の顔からは、一切の感情が窺い知れない。




「先日の件で、どうやら“神隠すの勾玉”が使われたらしい・・・・・・」




 ここで初めて、玄讖坊の目が鋭く光った。




 邪(ヨコシマ)な光を発する。




「左様でございますか・・・・・・」




 その声も、ゾッとする程、冷え切ったものだった。




「和尚よ・・・・・・。

何か妙案はあるか?」




 秀郷の問い掛けに、玄讖坊が目を細め、唇を歪める。




 笑っているのだ。




「ご心配には及びませんぞ」




 そう言うと、懐から、布で大切そうに包まれた小箱を取り出した。




 それを、秀郷に渡す。




 秀郷が、無造作に、その包みを解き、箱を開ける。




 たいして表情は変わらなかったが、しかし確かにその瞳に鋭い輝きが煌めいた。




「ほう・・・・・・。

これは・・・・・・。

“九曜の勾玉”の一つか・・・・・・?」




 玄讖坊が、愉快げに、そして悍ましい声で笑う。




「左様でございます。

殿。

これは、“九曜の勾玉”の一つ・・・・・・、“神宿しの勾玉”でございます」