甚兵衛と出会い、断十郎と出会い、自分の知らない世界があることを知ったのだ!




 その世界では、凪は生きることを許されたのだ・・・・・・。




 甚兵衛を見詰める凪の瞳から、涙が一筋零れ落ちた。




「甚兵衛・・・・・・、ありがとう」




 この人達は、自分に居場所を与えてくれた人達・・・・・・。




 冷え切った自分を温もりで包んでくれた人達・・・・・・。




「断十郎の旦那・・・・・・」




 凪が両手を差し出す。




「甚兵衛!

妙なマネをするんじゃねえ!」




 断十郎の鋭い声に、凪も思わず甚兵衛を振り返る。




 甚兵衛が、敵を前にした時のような、冷え冷えとした眼差しで断十郎を睨み、御神刀の柄に手を掛けていた。




「甚兵衛・・・・・・。

ダメだよ!」




 凪は嬉しかった。




 自分のために、そこまで体を張ろうとしてくれる者が居ることに。




「旦那、それはあんまりじゃないですか?

今になって、凪を捕らえようとするなんて!」




 甚兵衛の表情とは対照的に、断十郎は冷静な表情をしていた。




「甚兵衛・・・・・・。

凪は罪人だ・・・・・・。

それをかばうってことがどういうことか、お前ぇ分かってんだろうな?」