断十郎、甚兵衛、凪の三人は、弔問を済ませ、帰路についていた。




「平治さん、大丈夫かな?」




 凪が、ぽつりと漏らす。




「大丈夫でしょう。

平治さんの才能は、平吾さんが太鼓判を押してたんですから。

きっと、立派な鍛冶屋になるでしょう」




 甚兵衛が、まるで将来を予知しているかのように言った。




「そうだよね!

・・・・・・・・・・・・。

断十郎の旦那?」




 凪がふと、断十郎の様子がおかしいことに気付く。




「どうしたの?

断十郎の旦那?」




 断十郎が、厳しい視線で、凪を見た。




「凪・・・・・・。

お前ぇ、あの晩、盗みに入ってたな?」




 その言葉に凪の顔色が変わる。




 何も、言葉が出て来ない。




 あの晩、とは、甚兵衛の家に転がり込むことになった晩のことだ。




 断十郎は、そこら辺の事情を、甚兵衛に聞いて知っているのだろう。




「ちょっと待って下さい!

旦那!」




 甚兵衛が、慌てて口を挟む。




「てめぇは黙ってろ!

甚兵衛!

てめぇが口出ししていいことじゃねえ!」




 断十郎の一喝に甚兵衛は言い返せない。




「あ〜あ」




 二人の間に生まれた険呑な雰囲気を壊すように、凪が緊張感の無い声を出す。