「歯ぁくいしばんな!」




 優しく微笑んだままそう言ったあと、断十郎が顔を厳しい表情に一変させ、平治を思いっきり殴り付けた。




 平治が倒れ込む。




「ちょ・・・・・・、断十郎の旦那!?」




 凪が、思わず、悲鳴を上げるような声を漏らした。




 断十郎が厳しい表情のまま平治を見下ろし、睨みつけた。




「とっつぁんからの激励だ!

いいか!

金輪際!

もう二度と!

道を違(タガ)えんじゃねえっ!

分かったかっ!」




 手加減の無い断十郎の一撃に、平治がフラフラしながら断十郎を見上げた。




 そして、居住まいをただし、深く頭を下げる。




「ありがとう・・・・・・ございます・・・・・・」




 断十郎の鬼のような形相が、平治には、まさしく平吾の慈愛に満ちた厳しさの表れに見えた・・・・・・。