「平治・・・・・・」




 平治は、平吾の言葉に、今初めて愛情の深さを知った想いがした。




「お前ぇのやりたいようにやれ。

もうじき、目障りな頑固親父はいなくなる・・・・・・」




 そう言うと、慈愛に満ちた笑みで、息子を見た。




「いいか平治。

人様に迷惑の掛かることだけはするんじゃねえ。

誇らしく、堂々と生きる人間になるんだ!

そして、いつか・・・・・・。

いつか、お前ぇの鍛えた刀が、大勢の人を救うようになるといいなあ・・・・・・」




 平吾は、平治のほうを見ていた。




 しかし、平治は、その瞳の焦点が、もはや失われていることに気が付いた。




「親父・・・・・・!?」




「お前ぇの才能は、俺が一番よく知ってる・・・・・・」




 平吾が、うわごとのように呟いた。




 意識が混濁し始めているのかも知れない。




 だがそれでも、平治には、平吾の言葉が誇らしげに聞こえた。




 不意に、平吾が激しく咳込んだ。




 口を押さえた指の隙間から、大量の血が漏れていた。




「親父っ!?」




 平治が悲鳴を上げるようにしながら、慌てて平吾を支えた。




 平吾が、平治の手を掴む。




 それはもはや、痛々しい程、力が篭っていなかった。