百葉の体から落ちたのは鼠だった。




「あなたは!?」




 キシキシキシと百葉が笑う。




「儂の正体は鼠の群体だ!

儂は次から次へと鼠を生み出すことが出来る!

貴様の雷など、せいぜい体表にいる数匹の鼠を殺したにすぎん!

儂にはたいした影響はないわ!

さあ・・・・・・」




 百葉が悍ましい程の瘴気を身に纏う。




 赤く爛々と輝く眼(マナコ)で甚兵衛を睨む。




「死ねぇぇぇ!」




 百葉が甚兵衛に猛然と向かって行く。




 凄まじいスピードだが、甚兵衛はそのスピードを見切れる。




 雷の刃で百葉の攻撃を受けた。




 しかし、その時!




 パキィィィンと、何か金属が折れる音がした。




 甚兵衛が、夜空に弾け飛んだそれを目で追う。




 それは、クルクルと風車のように回転しながら飛んだ。




 そして、地面に突き立つ。




 それは、甚兵衛の刀の刀身だった。




 甚兵衛の刀は、切っ先から三分の二程が折れてしまっていた。




 彝経九郎と戦った時に入ったヒビが、今の一撃で悪化し、そこから折れたのだ。




 地面に突き立った刃のかけらは、暫くバチバチとスパークしていた。




 しかし、やがてそれも収まっていく。




 一同が呆然とその様を見ていた。