「キシキシキシキシキシ。

さぁて、まずはお前達からなぶり殺してやろう!」




 赤く目を光らせた百葉が、一同を睨み据えた。




 凪が、ひっと息を飲む。




 しかし、その時、その場に一陣の風が吹いた。




 その場に居る全員がハッとした。




「彝経九郎!?」




 百葉が、忌ま忌ましそうにその名を口にした。




 一陣の風と共に現れたのは、彝経九郎と経輝だった。




「フン。

また会ったな鼠!」




「おのれぇぇぇ、彝経九郎、しつこい奴!

そこまで人間どもの味方をするか!」




 憎悪をたぎらせた赤い目で、百葉が彝経九郎ねめつけた。




 しかし、その視線を受けても、彝経九郎は平然としている。




「鼠・・・・・・。

貴様ごとき小物などどうでもいい」




 経輝が怪訝そうな顔をした。




「師匠!?

そいつを倒さないんですか!?」




「経輝よ。

その鼠の相手はあいつらがするだろう。

我々の相手は、外に居る妖どもだ」




 今や、禍々しい妖気が《大木屋》の周囲を厚く覆っている。




「断十郎の旦那!

ヤバイよ!

すっかり取り囲まれちゃってるよ!」




 塀に上って妖達を警戒していた凪が慌てふためいて叫んだ。