「また、新手が出やがった!」




 断十郎が、忌ま忌ましそうに呟いた。




「百葉か!?」




 正六が、どこかホッとしたように言った。




 百葉は、用心深く、京允達に正体を隠していた。




 だが、鉄燎が死んだ後も強盗を続けると言った京允達を鉄燎の代わりにするため、正体を明かしたのだ。




 百葉が、断十郎達を見回す。




「無駄なあがきはやめておけ!

この屋敷は、既に妖に囲まれておる!」




「おめぇが親玉か?

いったい町の者に何をした?」




 百葉が、キシキシキシと何かを擦り合わせるような声で笑った。




「病魔を撒き散らしたのよ!

そいつらに強盗させるついでにな!

・・・・・・いや。

病魔を撒くついでに強盗をさせたというのが正しいな」




 断十郎が、百葉を睨みつける。




「流行り病もてめえの仕業か!

何のためにそんなことをしやがった!」




 キシキシキシと百葉が笑う。




 断十郎は、その笑い声がカンに障り、苛立ちが増した。




「何のために?

決まっとるだろうが!

儂の病魔は、人を妖へと導く。

妖が増えれば、人間どもなど皆殺しだ!

あとは、我らの思うがままよ!」




「くっ!

ふざけやがって!」




 断十郎が憎々しげに吐き捨てる。