辺りには、凄まじい妖気が漂い始めた。




 直接見なくても、夥(オビタダ)しい数の妖が屋敷を取り囲んだのが分かる程だった。




「クックック。

どうするつもりだ?

ここは既に囲まれてるぞ!

もうじき奴らがなだれ込んでくるぞ!」




 余裕を見せる京允を、断十郎が忌ま忌ましそうに睨んだ。




 戦意を喪失しかけていた正六も、再び気持ちを盛り返したようで、その顔に余裕の笑みを浮かべる。




「形勢逆転だぁ!

お前ら、皆殺しにしてやるぜぇ!」




 そう叫びつつ、正六が甚兵衛に斬り掛かってきた。




 甚兵衛は、それを巧みにかわし、逆に斬り返した。




「ぐぎゃああぁぁぁああぁああぁぁ」




 雷の力も加わって、甚兵衛の一撃は堪え難い苦痛を生む。




 正六は、耳をつんざくような悲鳴を上げ、のたうちまわった。




 しかし、その時、唐突に何者かの声が掛けられた。




「何をしておる、お前達!

人間ごときにてこずりおって!」




 皆がハッとして声のほうを見る。




 すると、塀の上に男が一人立っていた。




 月明かりが男を照らす。




 鼠のような姿があらわになった。