「鼠の妖か?」




 彝経九郎が、フンッと鼻を鳴らした。




 薬師は、全体の印象が鼠のように変わっていた。




 口からは、門歯が牙のように伸びている。




「キシッキシッキシッ・・・・・・。

そうよ。

儂は百葉。

鼠の化生よ!

だが一味違うぞ!」




 その言葉と同時に凄まじいスピードで、経輝に襲い掛かった。




 経輝にその爪が届くか届かないかというところで、彝経九郎が刀を一閃させる。




(むっ!?

こいつ!?)




 彝経九郎の斬撃は、百葉を捉えたかに見えた。




 だが、その刃はまるで、摺り抜けたかのようだった。




「キシッキシッ。

気をつけたほうがよいぞ!

儂の体に触れると死病に冒されることになる!

例え、刀で触れてもなぁぁぁ!」




 経輝が気色ばむ。




「師匠!?」




「触れてはいない。

触れる前に摺り抜けた。

奴には他にも秘密があるらしい!」




 彝経九郎はそう言うとニヤリと笑った。




 だが経輝のほうは気が気ではない。




「師匠!

ここは私が!」




 経輝ならば神器の力を使い、触れずに倒すことも可能だ。