経輝が警戒し、身構える。




 闇の中から滲み出るように現れた男を見てハッとした。




「お前は、薬師!?」




 現れたのは、花鵠城下の近隣にある村で、流行り病の特効薬と称する薬を売っている薬師だった。




 経輝は、城下に入った日から、花鵠國の内情を調査していた。




 その時に、この薬師の噂も聞き、一応、その姿も確認していたのだ。




 格安で特効薬を売る人の良い薬師という噂だったが、どうやらその噂は誤りだったようだ。




 薬師からは、明らかに邪悪な妖気が漂っている。




「ほう・・・・・・。

これは凄まじいな。

たった二人でこの妖どもを全部やったのか?」




 薬師が感心するように言った。




「お前が黒幕だったのか!?

お前はいったい何者だ!?」




 薬師が俯きながら、キシッキシッキシッと何かが擦り合わさるような音を漏らす。




 それが、薬師の笑い声なのだ。




 笑い声と同時に薬師の雰囲気がさらに邪悪さを増す。




 顔を上げた時、その目は爛々と赤く輝き、全身には毛が生えていた。