「師匠、あらかた片付いたみたいですね」




 経輝が、額の汗を拭いながら言う。




「大丈夫か?」




 彝経九郎が、経輝をちらりと見ながら、気遣うように声を掛けた。




 経輝は、神器“神隠すの勾玉”の超常的な力を行使したため、疲労の色が濃かった。




「ええ。

まだ大丈夫です。

それより、我々も《大木屋》に駆け付けたほうがよいのでは?」




 そう言う経輝を、彝経九郎は意味ありげに見る。




「お前もマメなことだな。

そこまで奴らに協力してやることもないだろうに」




 経輝が、やや憮然とした表情になる。




「花鵠國と父とは別の問題ですから!」




 彝経九郎が、苦笑を浮かべた。




「お前がそう言うなら、まあ良かろう。

なにがしかの因縁が、生まれそうではあるがな。

それが吉か凶かは、その時にならねば分かるまい。

では、《大木屋》とやらに行ってみるとしようか。

もっとも、行くまでにもいささか骨が折れそうではあるが」




 彝経九郎は、花鵠城下に満ちている妖気を感じ取っていた。




 妖に変化した住人はこれだけではないらしい。




 そして、彝経九郎達が移動しようとした時、男が一人現れた。