「蔵なら鍵が掛けられます」




「しかし、蔵じゃあ内側からは掛けられねえだろ?」




 断十郎が、困ったように言う。




 しかし、女は手を差し出した。




「旦那にお任せいたします」




 断十郎が見てみると、女の手には蔵の鍵があった。




「しかし・・・・・・。

俺が生き残れるってぇ保証はねえ」




 そう言う断十郎に女が首を振る。




「この期に及んでは、もとより死を覚悟しております。

どのようになろうと、旦那をお恨みすることはございません」




 断十郎が一同を見回す。




 皆の目には、確かに覚悟があった。




「分かった!」




 断十郎は、蔵の鍵を受け取った。




「平治、お前達も早く!

とっつぁん、歩けるか?」




 断十郎が、平吾に肩を貸そうとする。




 しかし、平吾はそれを押し止めた。




「旦那・・・・・・。

俺達はここでいい・・・・・・」




「何言ってんだ!?

ここじゃあ、いつ危険な目にあうか分からねえんだ!」




 断十郎が、平吾を諭そうとした。




 だが平吾の目を見て、断十郎はその心の内を知った。