かよが、今にも泣き出しそうな視線を泳がせ、平治の視線に辿り着いた。




 かよがか細い声で呟いた一言は、不思議とその空間では大きく響いた。




「平治・・・・・・にいちゃん・・・・・・なの?」




 平治がギクッとした。




 ばれてしまったことにうろたえる。




 正六の足も止まった。




 正六が、問い掛けるような視線で、平治を振り返った。




「平治・・・・・・。

知り合いか?」




「・・・・・・う。

いや・・・・・・、それは・・・・・・」




 本当のことを言えば、正六は、せめてかよだけでも見逃してくれるだろうか?




 だが、平治にはそんな風には思えなかった。




 なぜか正六から、嫌な気配が漂ってきたような気がするのだ。




 けれど、知り合いであることは事実だ。




 ごまかしたところで意味は無い。




「あ・・・・・・ああ。

俺の・・・近所に住んでる娘だ」




 正六がニヤリと笑う。




「ああ!

そうなのかぁ!

それは良かったじゃねえか、平治!」




「え!?

何だ、良かったって?」




 平治は困惑した。




 ますます、嫌な予感は強まっていく。