「平治ぃ〜。

何だよ、その様ぁ。

相変わらず、情けねえ奴だなぁ」




 からかうように、軽い口調で声が掛かった。




 平治が振り向く。




「せ・・・・・・正六?」




 平治が、そう呟いたのと同時に、店の主人が奇声を上げて襲い掛かってきた。




 平治にではない。




 鬼の姿をした正六にだ。




「あっ!?

よせ!

やめろ!」




 平治が思わず叫んだ。




 それは、正六に向けたのか、店の主人に向けたのか・・・・・・。




「ふんっ」




 正六が、無造作に刀を振るう。




 店の主人は、肩口から腹まで一気に斬り裂かれた。




 平治の目の前で、鮮血を撒き散らしながら、店の主人がくずおれていった。




 正六が、他の家人達に気付く。




 ニタァと笑った。




「なぁんだ。

みんな、こんなとこに居たのかぁ」




 正六が部屋に入ると、ひぃぃ、と空気を飲む音が滑稽なくらい聞こえた。




 平治の目には、恐怖でガタガタと震える、かよの姿が目に映った。