断十郎は深夜になってようやく帰宅することが出来た。




 家の近くまで来ると、ホッとしたのか、ふぅとため息を吐いた。




 昨今の情勢を考えると、帰宅出来るだけでもマシだった。




 実際、ここ数日、断十郎も城に詰めていて、帰宅するのは二、三日ぶりだった。




 断十郎は、一瞬、ホッとしたのだが、その時、人の気配を感じた。




 反射的に、刀の柄に手を掛ける。




 周囲の気配を探っていると、闇の中に、二つ人影を見付けた。




 断十郎が内心で舌打ちをする。




 城下は今、乱れに乱れている。




 夜、うろつくのは、相当危険な行為だった。




(チィッ!

家はすぐ目の前だってのに、ツイてねえな!)




 断十郎は、慎重に歩を進めた。




 相手がこちらに気付いているのかどうかは、よく分からない。




 しかし、近付いていくにつれ、断十郎はギクリとした。




 人影は、大小二つあった。




 小さいほうは、かなり小柄だった。




 どう見ても、大人ではない。