「貴方は強盗団の一味じゃないんですか?」




「貴様は何か勘違いをしているようだ!

俺が、いつ強盗どもの仲間だと言った?」




 甚兵衛が顔をしかめる。




「否定もしなかったじゃないですか!」




 甚兵衛の愚痴っぽい言い方に、少年が愉快そうに笑う。




「アッハッハッハ。

面白い奴!

面白そうなので、少々からかってみただけだ!」




 その言葉で、甚兵衛が、ますます憮然とした表情になる。




「貴方は、誰なんですか?」




 少年が、刀を引く。




「俺は、屏山の彝経九郎だ」




 甚兵衛が、目を見開き、凍り付いた。




「なるほど・・・・・・。

どうりで、私では歯がたたなかったわけです・・・・・・」




「なに。

まあ、そう意気消沈することもない。

先程も言ったが、ここ数百年で俺に一撃入れた人間はお前が唯一だ」




 彝経九郎はそう言うと、着物に出来た焦げをヒラヒラさせた。




「一撃、とは言っても、着物にそんな目の錯覚かと思う程度の焦げが出来ただけでは・・・・・・」




 悔しそうな甚兵衛に、彝経九郎は苦笑にも似た笑みを浮かべた。