既に日も暮れて時間が経っている。




 辺りには人気は無い。




 しかし、戦いになった時のことを考えて、甚兵衛は近くに民家の無い原っぱまでやって来た。




「ずいぶんと淋しい所まで連れて来たものだな」




 少年が皮肉るように言う。




「万が一、ということもあるので」




「万が一?」




 少年は、ニヤニヤしながらしらばっくれる。




 甚兵衛は、それを無視した。




「単刀直入に聞きます。

あなたは、近頃、城下を騒がせている強盗団の一味ですか?」




 少年が愉快そうに甚兵衛を見た。




「だとしたら、どうする?」




「仲間を連れて、城下を去っていただきたい」




「断ったら、どうする?」




 少年は、相変わらず、ニヤニヤして甚兵衛の出方を窺う。




「その場合は、力ずくででも出て行っていただきます!」




 甚兵衛が、明らかな殺気を込めた。