甚兵衛が鬼兵から話を聞き、城下に戻って来る頃にはすっかり日が落ちていた。




 だが甚兵衛は、休まず鬼兵から聞いた旅籠《三浦屋》に行く。




「さて・・・・・・。

どうしますか・・・・・・」




 三浦屋まで来たはいいが、二人相手に無謀なことは出来ない。




 何とか、二人組を別々にしたいところだ。




 かといって、宿の者に呼び出してもらおうにも、甚兵衛は大雑把な風体しか知らない。




 名前も知らないのでは、呼び出してもらうことも出来なかった。




「仕方ありませんね」




 甚兵衛がポツリと呟く。




 そして、一瞬だけ、殺気を込めた気を発した。




 これで何か動きがあるかも知れない。




 もっとも、ほとんど一か八かだが。




 しかも、場合によっては二人出て来るかも知れない。




 まあ、二人出て来た時は顔を覚えておけばいい、と甚兵衛が考えていた時、宿の外に何者かが出て来た。




 小柄な人物だ。




 侍の格好をしており、少年のような外見だった。