断十郎は、花鵠城下からやや外れた所にある茶屋で団子を頬張っていた。




 だが、サボっているわけではない。




 とてもではないが、今の花鵠城下は、役人がサボっていられるような状況になかった。




 そのせいか、断十郎が団子を頬張る様も、どこかやけ食いのようにも見えた。




 断十郎の隣では、浪人風の男が、断十郎など知らぬげに茶を啜っている。




「申し訳ありません・・・・・・。

重元様・・・・・・。

不甲斐ない有様で」




 断十郎が、器用な喋り方をする。




 団子を口いっぱいに頬張りながら、小声で周りの者に聞き取れぬよう喋る。




 断十郎の会話の相手は、隣の浪人だ。




 だが、周りの者は、そうとは気付くまい。




 浪人のほうも、ほとんど口を動かすことなく、断十郎に応じた。




「致し方あるまい。

お前のせいではなかろう。

妖どもが一枚上手、というだけだ」




 主の言葉に、断十郎は甘い団子を食っているにも関わらず、苦虫を噛み潰したような表情になった。